これがシリコンバレー流グロースハック!Dropboxが一晩に7万人を集めた方法

この記事は、Quora(米国のQ&Aサイト)に投稿されたものを、私たちTokyo Otaku Modeが日本語に翻訳したものです。執筆者はMarkus KirjonenさんというUIデザイナーの方で、スタートアップについて多く書かれています。私たちはMarkusさんから許可をいただき、この投稿を日本語に翻訳して日本で発信する機会を得ることができました。今回から合計6回にわたり、有名スタートアップ企業がどんな方法で新規ユーザーを手に入れたのかについて、実例をもとに紹介していきます。ユーザー確保に悩んでいる方! これからユーザーを獲得していきたい方! 成功するスタートアップへのヒントを得たい方! 必読です!! 紹介する実例はどれも大成功したものばかりですので、必ずどこかに参考となる情報が潜んでいることでしょう。

Dropboxの成長は目覚ましい。彼らはたった5年で、約1億人もの新規ユーザーを獲得してみせた。だが、驚くべき点はそれだけではない。なんと正式な広告費なしに、しかもこの分野の新参者にもかかわらず、運用をこなしているのだ。広告費を使う代わりに、サービスをユーザーにシェアしてもらうというシンプルさを求め、さらに4分間の動画に頼ることによって、それを可能にしている(詳しくは記事の後半で)。

Dropboxというツール — これまでの道のり

2007年初め、Drew Houtsonは悩んでいた。複数のコンピュータ上で、ファイルの同期がしづらいという問題について、まだ誰も手を付けていなかったころの話である。Houtsonは当時を振り返り、そのころのサービスは「時間、膨大なデータ量、バグなど、問題が多すぎて、考えすぎなければいけなかった」と語る。問題に直面した彼は、より良いデータ同期アプリケーションを作ろうと考えた。

サービスを利用したい、サービスの質が悪い、と思っているであろうクライアントと約4カ月にわたって話し合い、プロトタイプを作り、アイディアを巡らせ、Houstonはこのアイディアをサンフランシスコにある、Paul Grahamが立ち上げたY Combinatorに持って行った。それと並行して、彼はこのアプリケーションをHackerNewsに投稿した。まだサービスの持ち得る可能性の大きさが測れなかったころのことだけに、いまになってそのページに戻り、人々のコメントを読むと非常に面白い。

こちら意見を見てほしい。とくに明察だと言えるのではないだろうか。Dropbox自体のアイディアが生まれた瞬間は「これが私の人生における宿命だ!」というような、大きなものでは決してなかった。単に、Houstonがやってみてもいいな、と思っていたサービス案のうちの1つに過ぎなかった。彼はただ、自分の仕事人生のうえで最も不便と感じていた部分に着目しただけだったのだ。

結果、Houstonは15,000ドルのシードファンディングをY Combinatorから調達することに成功した。また、立ち上げメンバーとして、MITの生徒だったArash Ferdowsiを引き入れた。これがのちに、GoogleとYahooの後援も行っている、Sequoiaからの1200万ドルもの投資へとつながっていく。Dropboxは2008年のTechCrunch50で正式に発足。そこで最初に行ったアクションの1つは、他のサービスがするように、Googleで広告を打ち出すことだった。

2008年の終わり、DropboxはGoogle Adwords(以下アドワーズ)で損失を出し始めた。新規顧客獲得のために、99ドルの製品に対して投じた300ドルの広告費は、決して十分と言えるものではなかった。Dropboxの抱えていた問題は、ユーザーが実際に使ってみて、初めてその必要性に気付くという点だった。要するに、説明が非常に難しいサービスなのだ。広告が全員に響くとは限らない。Dropboxは、通常とは違ったメソッドを使うことによって、現在の新しい顧客獲得までつなげていったのだが、以下にその方法について説明しよう。

Dropboxはビデオを使い、1晩に7万人もの顧客を獲得した — その方法とは?

1.ユーザーにDropboxを共有させる

口コミはサービスを広めるのにとても有効な手段になる。友人の勧めは信頼しやすいし、互いのニーズを知っているからこそ、サービスを勧めやすいという利点もある。サービスに満足したユーザーは、友人たちにそれを広めたいと思うだろう。そのプロセスを簡単にしてみせることで、共有の頻度は上がる。

アドセンスの広告で失敗したことに学び、Dropboxは既存のユーザーに目を向けた。彼らは、まるでウイルスのようにサービスを広めるキャンペーン方法を取った。さまざまな場所で、Dropboxの容量を増やすことができるようになる、というものだ。例えば、Facebookでのシェア、Twitter上のフォロー、サービスをメールで共有する、など。ユーザーにサービスをシェアさせることで、そのサービスで満足させるだけでなく、友人に広めれば追加の容量を得ることもできる。たった30日間で、2,800万もの招待状が送られることとなった。

ポイント:ユーザーにサービスを共有させろ。その代わりに、ユーザーにはなにか特典を付加することで、共有させやすくなる。もちろん、そのためにはユーザーが満足するような良質なサービスを提供しなければならない。サービスと特典が連動していると、ユーザーを離すこともない。新しいiPhoneをプレゼント!ではだめだ。ご存知の通り、人は友人からの勧めが最も行動につながりやすい。友人へと共有させることは、広告形態としてはベストなのだ。

この方法は、全員にできるものではないかもしれない。たいてい、製品でもサービスでも、なにかしら「売り物」が必要になるからだ。だが、もしこのカテゴリ内に区分されるとしたら、こういったキャンペーンは考えてみるべきだろう。

2.サービスを説明した4分間のビデオ

このビデオは素晴らしい。初めてDropboxの話を聞いた人は、あまり大したことのないものに聞こえるかもしれない( Dropbox は、作業アイテムを保管するためのホームです。チームが Dropbox に追加したアイテムは、チーム メンバー全員のコンピュータ、モバイル デバイス、Dropbox ウェブサイトに自動的に同期されるため、全員がどこからでも作業できます。 ーDropboxウェブサイトから引用)。だが、この汎用性や利便性の良さは実際に使ってみれば体感できる。ならば答えは1つ―――― ビデオにすればいい。

実際に製品に興味を持っている人がいるかを確かめるため、HoustonはDropboxの説明ビデオを制作した。短く、ほぼ4分ちょうどのシンプルなもの。最も重要なのは、観客を巻き込んだかたちのプレゼンテーションがなされたビデオになっている点だ。実際に見てみよう。

おわかりいただけただろうか。このビデオには、製品の説明だけでなく、多くのジョークが散りばめられている。これがDigg(ソーシャルニュースのサイト)のユーザーの心をつかんだ。便利そうなサービスの説明だけではなく、多くのコミュニティ内でしか通じないジョークを組み込むことにより、Houstonは自分がコミュニティ内の人間であることを示すのと同時に、それがユーザーに通じることがわかっていたのだ。

繰り返すが、彼らの成長は目覚ましい。「Coming Soon」状態でのページの登録者数は1夜にして7万にまでのぼった。1つのビデオが生み出したこの現象が、先を見通す非常に良い指標となったと言えるだろう。

ポイント:ここでは、ビジネスを行うえで重要になる2つ点を押さえておきたい。1つ目は、スマートなかたちで自分の製品やサービスを打ち出すこと。言葉で説明できないことは、思い切って見せてしまったほうがいい。ビデオは、最近のGoogleやAppleのような手の込んだものでなくても構わない。実際、Dropboxが作ったような、シンプルなデモビデオのほうが奏功することも多い。

2点目は、誰に対して広告しているかを知ることである。それに加え、自分がその受け手に対して誠実であることを示すのも必要だ。そのビデオがいまredditでシェアされた場合、なじみのある単語で笑いが取れたビデオは、ユーザーに勧められ注目されるだろう。やりすぎは禁物。だが、内輪の冗談はこういうときに役に立つ。

Dropboxは以上の2つのメソッドが功を奏して、大成功を遂げた。もしかしたら、あなたのビジネスに応用できる点もあるかもしれない。

サービスはシンプルに説明されているだろうか? 長い文字の羅列になっていないか? Dropboxが使ったような、ビデオや写真のスタイルでは説明できないだろうか?

ユーザーに勧めやすいようなキャンペーンを行っているか? Dropboxは、一風変わったマーケティングを始めるまで、アドセンスを使った広告キャンペーンでは結果を出せていなかった。

自分のビジネスをシェアするとき、オーディエンスを巻き込み、誠実な姿勢を打ち出せているだろうか? 自分が、ただのマーケティングを行うビジネスマンとしてではなく、コミュニティの一員だということを示せているだろうか?

これらのアイディアを、それぞれのビジネスに持ち込む方法は?

その後のDropboxについて

これらのことを実現したDropboxは、使われる頻度も急激に加速した。大学の法学部生から、難民救済に携わる人まで、世界中の人々がDropboxを使い重要な書類をシェアし、保管している。感謝のメールは後を絶たず送られてきており、「(ビデオを公開した)あの瞬間に、ヒットしたと確信した」とFerdowsiは振り返る。

2011年の10月までに、Dropboxは5,000万人以上のユーザーを獲得した。その数カ月後、世界中のファイルデータのバックアップのうち、14.4%をDropboxが保有していると発表された。さらにそこから1年以内には、ユーザー数は倍に増大。この時点で、Dropboxが巨大な存在になることは誰もが想像できただろう。Houstonのシンプルなビデオや、HackerNewsに投稿された彼の小さなビジネスを見ることで、始まりがいかに小さなプロジェクトだったかを振り返るのは非常に興味深い。

いま、Dropboxは世界中、3億人もの人々へとサービスを展開している。

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