今年あなたはどれだけ失敗できましたか?

Tokyo Otaku Mode(以下、TOM)という海外に日本のポップカルチャーを発信/越境ECを展開するサービスを行っています。TOMのFacebookページを作ってから5年、越境ECを始めてから3年ちょっとが経ちました。この週末に、今年僕やTOMの各メンバーが中心となって動いていたプロジェクトや案件を振り返っていました。これまで数多くの失敗と、失敗と、失敗と、少しの成功を積み重ねてきてここまでやってきましたが、この2016年はトライの数でいうとTOMの長い歴史の中でも、もっとも試行回数が多く、そのぶん学びも大きい1年でした。

特に、今年の後半は、若手もベテランも分け隔てなく、適性がある各メンバーにプロジェクトオーナーとしての裁量と責任を持ってもらい、新しいトライ=プロジェクトを進めてもらいました。具体的なプロジェクトは、越境EC関連の新サービス/機能追加、国内/海外のイベント企画/運営、商品開発、コンテンツ制作、翻訳事業、広告事業など多岐にわたります。
最近のトライで分かりやすく目標を達成したプロジェクトをひとつだけ紹介すると、Sさんが手がけたこのクラウドファンディングのプロジェクトです。8万ドル達成目標のところ、大きく上回る18万ドルの調達ができました。

車輪の国プロジェクト

プロジェクトの成功を、「設定した目標の達成」と定義すると、達成した/しなかったかは、はっきり区分けされます。ただ、TOMではこうしたプロジェクトにおいて、仮に目標に達成しなかった場合でも、関係者を咎めたりすることはありません。目標を達成しなかったとしても、達成しなかったこと自体はその人自身が一番身にしみて感じて、次こそは達成するぞという気持ちが自然に湧くからです。そのプロジェクトにフルスイングで取り組んできたならなおさらです。

また、達成した/しなかったかは、自分自身が出した結果として、失敗も成功も社内外にはっきりとさらけ出されます。そういう意味ではプロジェクトを進める人は、すでに大きなリスクを冒しています。その時点で、何も動かなかった人よりも、一歩を踏み出した点で称賛されるべきですね。

TOM社内ではないのですが、結果やアウトプットを見てから、鬼の首を取ったように、「私はうまくいかないと思っていた」「あれじゃうまくいかないよね」という評論家めいた声が上がる組織もあると聞いています。結果を見て何かを語ることは誰でもできます。そんな話を聞くと、そういう雰囲気や環境だと何もリスクを冒せなくなってしまうよなぁと残念な気持ちでいっぱいになります。

スタートアップはリスクを冒してこそスタートアップであり、それが大企業や伝統的な会社に対する強さになります。その一番小さな個人レベルでリスクを冒せなくなってしまったとしたら、組織全体の力強さも失われてしまいます。スタートアップにとって、成功も失敗もしない、つまり何も動かないことこそが、最大のリスクでしょう。そう考えると、どれだけ多くトライして失敗してきたかが、個人単位でも組織単位でも、そのスタートアップがどれだけ成長できたかのバロメーターになるのではないでしょうか。

今年を振り返ってみて、あなたはどれだけトライして失敗してきましたか?
そういえばあまりトライもせず失敗がなかったな、ということであれば、来年はぜひ新しいトライを始めてみましょう。

失敗はつらく、何度もしたいものではないですが、それでもスタートアップにいる限りは、成功を勝ち取るためにトライし続けなくてはいけません。つらいからこそ、次は成功を掴もうと、振り返りや改善を重ねてより成功率が高まっていくものです。

成功しても失敗しても、次回以降より良くしていくための振り返りや改善/ブラッシュアップは常々行っていきたいものです。不思議なもので、人はアウトプットされたものに対しては、ここをこうしたほうが良かった、次回はこうすれば上手くいく、ということが滑らかに考えられるものです。ただ、こうした改善点が浮き彫りになるのは、”先にアウトプットがあったから”ということは忘れてはならないと思います。切り拓いた道があるから、その道をどう整備していくかという発想が生まれるのであって、道がない状態では何かを整備しようという考えは出てこないものですよね。リスクを受け入れる覚悟をもって道を切り拓く人こそ、真の勇者だと思います。

さて、非常に前置きが長くなってしまいましたが、ここからは、プロジェクトの成功のためにどんな姿勢で取り組むべきかということを、これまでの経験を通じて書いてみたいと思います。ひとつひとつのプロジェクトは”色”も”形”も違うので、成功の秘訣なんぞあればこんな楽な話はないと思いますが、それでも大きく成功するプロジェクトに共通する何かがあると感じています。そんな共通項をエッセンスとしてまとめてみました。

1. 自らスタートを切れていること

プロジェクトをやるぞという時に、最初の一歩をどう踏み出すかは、人によってはとても腰の重いものですね。そうしたときに、自らスタートできたプロジェクトとそうでなかったプロジェクトでは、スピードも完遂力も前者のほうが良いアクションに繋がっていることが多いです。始めなければ失敗すらできません。成功するためには、まずは始めてみることが肝要ですし、自らスタートを切ってとにかく動くほか無いのです。また、実際動いてみても、プロジェクトの進行に大事な部分を人任せにしていると、それが理由で動かなかった場合に推進力が失われ、途中で失速するケースもありえます。それでも、そこさえも突破するような「セルフスターター」の強いマインドが、立ち上げ時には求められるのです。

2. 成功のイメージが掴めていること

大きな成功を収めるプロジェクトは、計画時点で成功のイメージが非常にクリアで、確信に近いレベルまで高められていることが多いです。例えば、商品開発であれば、過去の類似商品の販売実績など客観的なデータから、今回のプロジェクトの売上想定やトラフィック想定が細部にわたり数字的な裏付けがあり、「確信を持ってこれくらい売れます!」といった具合です。まったくの新しい取組で、数値的な裏付けは難しくても、これがこうなっていたらこうなるだろうというロジカルに筋が通っていて、成功したときのビジョンが明確にイメージできていることも大切です。成功のイメージが掴めていることで、プロジェクトにまつわるあらゆるタスクを確信をもって進めることができ、リーダーであればメンバーにそのイメージを共有することで、これは成功するというポジティブな雰囲気を作り出すことにも繋がり、結果もついて来るのだと思います。

3. 周りがあきれるくらいの情念を持つこと

今年の成功事例で特筆すべきことは、取り巻く環境的にも、社内的にも、「もうやらなくてもいいのでは?」という状況のプロジェクトが、大きな成果を出してしまったということが続いたことです。ストップをかけようかという段階のプロジェクトが、ひとりのメンバーの執念により大きな成功を収めてしまうことがありました。これはなんなのだろうと考えると、どうしてもやり遂げたいという情熱…というよりもはや情念に近い強い想いを持って取り組んでいるかどうかの「リトマス紙」なのではと感じました。ほとんどのプロジェクトでも同じことが言えると思いますが、TOMの場合も、ひとつのプロジェクトで大きな成功を収めるのには個人プレイだけで成立することは少なく、やはり周りの協力が必要です。振り返ると、周りがあきれるくらいの情念を見せるつけることで、大成功をつかむために必要な、ひとつひとつのアウトプットが変わってくる、だからこそ成功を掴み取ったのだと思えます。

4. 自分自身のリミットを解き放つこと

「普段の業務とは違うから」「仕事的にキャパオーバー」。「できない理由」は本当にかんたんに並べることができます。「できない理由」を考えるのではなく、「できる理由」を考えて実行する。その足かせとなっている制限を自分で外せるかどうかが、プロジェクトの成功のためには必要に思います。僕が思うに、賢い人ほどいろいろ先読みができてしまう分、自分の上限のかなり手前でブレーキをかけがちだと思います。本来的にはここまでやれるはずなのに、もったいないなと思うことがよくあります。「バカになれ」ではないですが、これまでのプロジェクトの成功事例からは、後先考えずに動いているメンバーが成果を残していることが多かったように思います。

5. 悩み続けること

昨年、とあるTOMメンバーがメンバー向けに書き記したメッセージの中で、僕が気に入っている言葉があります。『物語の主人公が一番輝くときはいつですか?それは・・・苦しんでいるときです。夢が最も遠く感じるときです。そのときに立ち上がれる、そのときに意志の力だけでなんとか踏ん張れるから、いつまでも記憶に残る、ずっと愛される主人公になります。』プロジェクトが計画したとおりにスムーズに何もトラブルなく終わることなどはあるわけもなく、その道程は辛く悩みが尽きないものです。プロジェクトを進める者は、そういう意味では物語の主人公よろしく、あらゆる困難を乗り越えて立ち向かう意志を持ち続けるということが、もっとも重要なことだと思います。

今年あなたはどれくらい失敗できましたか?