リモートワークの是非 - 特別編:トップエンジニアたちの夜 『シドニアの騎士』観賞会&座談会 ~Part3~

こんにちは、ライターの岡田大です。
お待たせしました。特別編「トップエンジニアたちの夜」のPart3をお届けします。
※Part1~2未読の方&内容を忘れてしまった方は、Part1Part2を一読してからお楽しみください!

チームワークの重要性ならびに、仕事を円滑に進めるための“道具”について語り合った参加メンバーたち。話題は自ずと、スタートアップ企業のエンジニアたちの間に広く浸透しつつあるリモートワークへ……。

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堀木 ところで直也さん、リモートワークについてはどんなお考えをお持ちですか?

伊藤 あれ? TOMさんではリモートワークはしてないの?

関根 一部していますが、基本はみんな社内です。ただ、オフィスのスペースが手狭になってきたので、次に入ってくる人はリモートが視野に入ってくるかなと。輪番制にして、倉庫行ってくださいとか、明日からアメリカ行ってくださいとか(笑)。

一同笑

伊藤 37シグナルズの『Remote(邦題:「強いチームはオフィスを捨てる」)』って本あるじゃないですか? あれ、すごくいいですよ。

関根 ウチには2冊ありますね。あ、3冊か。いつまで経っても誰も買わないから、早く買おうと言っていたら、なんだか3冊になっちゃいました(苦笑)。

伊藤 リモートワークはマネージャーが慣れるまで一番大変ですよね。「あの案件を彼にやってもらおう」と思ったときに、あれ? いない、みたいなことがしょっちゅう起こりますから。

丸山 Sqwiggleを使っても、ですか?

伊藤 Sqwiggleでだいぶ解消されるけど、それでもいない、という状況はけっこう出てくるものなんですよ。

関根 Sqwiggleは、ああいうのを好きじゃない人は嫌がりますよね?

伊藤 使うと意外とそうでもないですよ。少なくとも僕は、全然抵抗感はないですね。むしろ面白いというか……。

堀木 リモートをやっていると、いきなりビデオ会議とかが始まるんですよね?

伊藤 うーん、いきなり話しかけるってことはあんまりなくて、だいたいSlackとかで「○○さんいますか?」って聞いて、「いますよ」ってなったら、じゃあ「ハングアウトしますね」っていう流れが多いですかね。

堀木 ハングアウトは、どこかのタブが光っているのに気付かなくて、けっこうスルーしちゃうんですけど(苦笑)。

伊藤 そうそう、こういう通知とかを見ない派が1人でもいると大変なんですよ。リモートワークにならない。

一同大爆笑

堀木 そもそも使うツールが統一されていないと、いろいろなところを常にチェックしないといけないじゃないですか? それが悩みの種なんですよ。

伊藤 けっきょくそういう問題が起こるから、リモートワークをする際にはメンバーで道具を揃えることが大前提になりますよね。ただ、保守的な道具にこだわると、やっているほうはストレスに感じるから、道具選びは常にアグレッシブにいったほうがいい。だから、新しい物をどんどん使っていきつつ、使うときは揃えるというチームワークが必要になるので、けっこう難易度が高いんですよ。

堀木 そうですよね。

伊藤 例えば最近はチャットはSlackがいいみたいな話になってますけど、HipChatを使ってる集団を、明日からSlackに移行するぞ、って言って移行しちゃうとか、それくらい思いきったことをやってもいいと思います。

堀木 Slackって、HipChatとどこが違うんですか? 僕のなかではアイコンがあるかないかの違いくらいかなと思っているんですけど。

伊藤 ぶっちゃけ言うと、それです(笑)。

一同笑

伊藤 あとね、Slackは通知がチャンネルごとに設定できるかな。

堀木 それ、デカいですね!

伊藤 この機能は地味にいいですね。ふだんは通知を全部切っているけど、必要なときだけ通知が来るように設定できますから。障害に関するアラートチャンネルはエンジニア全員に通知がいくようにしたり、絶対に知っておくべき重要な通知だけ来るようにしたり。

重岡 それ、個人個人で設定できるんですか?

伊藤 できます。

堀木 HipChatだとオンとオフしかないから、全チャンネルの通知が来るか、アットマーク付きのやつが来るかの設定しかできませんもんね。僕はオンにしているからバンバン鳴っているんですけど、そうするとけっきょく全部見なくなってしまうんですよ……。

伊藤 あとSlackは外部サービスのインテグレーションのインターフェースがかなりよくできていて、GitHubを流すのも、CircleCIを流すのも、ものすごく簡単にできますから。

堀木 そうか~。GitHubの通知がUIに変わってからは、ラベルを付けたという通知が来て、HipChatが埋まっちゃうこともありますもんねぇ。

今吉 プッシュした内容が逐一来る、みたいな(笑)。

堀木 そうそうそう(笑)。

伊藤 まあ別にHipChatでもいいんですよ。やれることはほとんど変わらない。ただ、それよりもちょっといい道具が隣にあるとわかっているのに、むかしから使っているという理由だけで乗り換えないというのは保守的で、そういう保守的な考え方がリモートワークにはなじまないことが多い。リモートワークはとにかく、いま使える道具でいちばんいいやつを使いまくることによって成立しますからね。古い道具がストレス発生の要因になることは間違いないです。

重岡 それでまた新しい競合サービスが出てきたら、乗り換えるってことですよね?

伊藤 ですね。ただ、乗り換えるたびに痛みが生じますけど(苦笑)。

重岡 なかには、むかしのほうがよかったという人が必ずいますからね。

関根 エンジニア集団ならまだしも、全社的にやろうとすると、けっこう大変でしょう。

伊藤 会社全体でHipChatからSlackに乗り換えたら、おそらくエンジニア以外からもの反発はあるでしょうね。やっと覚えたのに……みたいな。

関根 うわー。そのシーンが目に見える(苦笑)。

今吉 しばらく使い方を聞きに来られますよ。関根さんのところに(笑)。

伊藤 新しい道具に乗り換えるときのコストをチーム全体で分散しましょう、という意思統一が図られていればリモートワークはうまくいくと思いますが、そもそもギスギスしているチームだと、誰かが舌打ちすることになるから、けっきょくはうまくいかないんです。だから僕は、リモートワークを導入できない状況なら導入すべきではないと思うし、仮にそういうチームから相談を持ちかけられたらやめたほうがいいって言いますね。いいチームじゃないと、絶対にうまくいきませんから。

堀木 ウチはわりと、各チームが新しいものをどんどん使い始める傾向にありますね。最近、エンジニアじゃないチームがGitHubを使って、すたれて、1回別のやつに乗り換えたんだけど、そっちがもっとダメでけっきょく戻ってきた、なんてこともありました。

伊藤 それでうまくいくケースもありますからね。GREEなんかはそういう会社でした。基本、新陳代謝に任せるというか、あえてカオスにするというか。とにかく、リモートワークを成功させるためには、そのへんの方針がハッキリしていないとダメでしょう。要は、日々発生する問題をちゃんと解決できる人がチーム内に必要ということです。

関根 リモートの人はホントにリモートオンリーなんですか?

伊藤 僕がかかわっているKAIZENでは、常にオフィスにいる人、週に2~3回の人、まったく来ない人の3パターンになってますね。別にそういうルールがあるわけじゃないけど、自然とそんなふうになった。

堀木 それぞれ役割も違うんですか?

伊藤 一緒ですよ。

堀木 遠すぎて来られないとか?

伊藤 1人、2人そういう人はいます。大阪に住んでいる人とか。あと、バリ島の人もいます。その人とやり取りするときは、音声の質が悪くてね(苦笑)。

堀木 音声の質は相手の環境によって大きく違ってきますよね。僕は前職で長野と東京でリモート的なことをやっていたんですけど、なんかこう、初めのセットアップの段階で躓いたりして……。

伊藤 そうなんですよ。各自が音声とか通信が快適な環境に身を置かないと成り立たないんですよね。自らが静かな環境をつくって、さらにマイクを使って、というように、ものすごく気をつかう必要があります。でも、それがなかなか難しい。例えば20人規模で同期して朝礼とかをすると、後ろで奥さんが食器を洗っている音が聞こえてきて、「誰だよ、うるせー!」ってことになったり(笑)。

堀木 話していないときはミュートしろ、みたいな(笑)。

伊藤 4~5人だったら誰がうるさいかはすぐにわかるんですけど、20人とかになると、音の発信源が特定できないんですよ。「とりあえずいったん全員ミュートしろ」って言って、「順番に音量を上げて」ってことをしないとわからない。

一同笑

堀木 一対一でも、相手方の雑音がうるさく感じるときはありますもんね。

伊藤 だから、慣れてくるまではそういうことにストレスを感じちゃうんですよね。半年くらい続けていると、どのへんがお互いストレスに感じるかが理解し合えるようになるから、適度なタイミングでミュートもできるようになるんですけど。

堀木 確かに。

伊藤 でも、入ってきたばかりの新人は、いきなりリモートワークとか言われても要領がわからないですよね。だから僕は、音声環境に気を使おうとか、iPhoneにつなげるだけでもいいからマイクをつけましょうとか、リモートワークのガイドラインのようなものを全部ドキュメントに起こしています。

川崎 それを直也がやってるの?

伊藤 基本は、全部文章に書いて残していますよ。

堀木 Qiita:Teamにですか?

伊藤 そうですね。

かつて“テレビ電話”は、ドラえもんの秘密道具の延長線上にある、手の届かない代物だった。それがいまや、映像と音声でリアルタイムにコミュニケーションを図れる道具は、誰もが手にできる身近なものになった。加速度的に普及するオンラインコミュニケーションツールが、世の中の常識をどんどん変えつつある。仕事においてもプライベートにおいても、それはまったく同じだ。

とはいえ、使用者自身がその道具の特性と相手の性格をしっかり理解していなければ、うまく機能させることはままならない。ことリモートワークにおいては、メンバー全員の意思を統一させること、同じ道具を使うこと、ルールやマナーを守ること、問題が発生したときに解決できる人間がメンバー内にいること、等々が成功するための必須条件となる。便利な道具が手に入っても、使いこなせなければ意味がない。この座談会では、リモートワークが抱える利点と問題点の多くが浮き彫りになっていった。

そして参加メンバーは、リモートワークについてひと通り意見を戦わせたあと、また別のホットな話題に熱量を上げていくことになった。これまたエンジニアの間で広く活用されている、技術情報共有サービスQiita:Team。続くPart4では、Qiita:Teamならびに情報共有の現状について語り合うトップエンジニアたちの様子をお伝えしていきたい。

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