元Facebook CTOが教えるQuora活性化&あまり知られていないreddit成功の秘密

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この記事は、Quora(米国のQ&Aサイト)に投稿されたものを、私たちTokyo Otaku Modeが日本語に翻訳したものです。執筆者はMarkus KirjonenさんというUIデザイナーの方で、スタートアップについて多く書かれています。私たちはMarkusさんから許可をいただき、この投稿を日本語に翻訳して日本で発信する機会を得ることができました。合計6回にわたり、有名スタートアップ企業がどんな方法で新規ユーザーを手に入れたのかについて、実例をもとに紹介していきます。

今回のケーススタディは、Quoraとredditです。前回のDropbox編では、サービスを新規ユーザーに定着させるためのテクニックを紹介しました。しかしながら、コンテンツ共有がメインのウェブサイトを運営する多くの人は、ほどなくしてウェブページの過疎状態という問題に直面します。まさに、最初にぶつかる壁です。人が集まれば集まるほど、ユーザー同士の交流が活性化し、より重厚なコンテンツとなっていくウェブサイトで、ユーザーの交流やコミットメントを促進するにはどうしたらいいのか……。今回はQuoraとredditを通して、その秘密を探っていきましょう。

空っぽのホームページにユーザーを集めるのは難しい。フィードバックが全然返ってこなかったり、投稿したものが注目を集めることができなかったら、早々に「もうやめてしまおう」ということにもなりかねない。

これは初期段階で数多くのコミュニティが直面する問題で、よく「鶏が先か、卵が先か」に例えられる(Chicken and egg problem)。コンテンツのない場所に人は集まらないが、人の集まらない場所にコンテンツは存在しない。まさに「鶏・卵」問題なのである。

ところが、なんとも幸いなことに、その問題を解決する答えが実は存在する。ひとつは、単純に既存のコミュニティから新しいコミュニティを派生させること。わかりやすい例が、Imgur(人気の画像共有サイト)だ。ここは、元はredditのユーザーのためのツールとして派生したサイトで、訪問者を少しでも増やしておいて、そこから独自の魅力的なコンテンツを生み出す、というQuoraとredditが使ったメソッドにより成功に導かれた。

###空っぽのウェブサイトを好む人などいない。
redditもQuoraも、初期段階のコンテンツは立ち上げメンバーが自ら投稿したものがほとんどだったが、彼らのアプローチ方法はそれぞれ違っていた。

###Quora発足
Quoraは自らを「最高の知識の泉」だと説明している。幅広いトピックに関してのQ&Aを特集するサイトで、初期段階から注目されている話題は、テクノロジーやベンチャー企業に関するものが多い。一般公開されてから2年が経過し、現在は1カ月に150万人のユニークな読者を獲得することに成功している。なによりもこのサイトで特徴的なのは、質問への返答内容や参加者の質が非常に高い点だ。Mark Zuckerbergなど、巨大な企業の創設者が人々の質問にアドバイスするかたちで参加しているが、ここでは決して稀なことではない。

2008年、Facebookの前CTOだったAdam D’Angeloがその職を離れたとき、数多くの噂話やざわめきが起こった。そのころはまだ公けになっていなかったが、彼の離職にはある目的があった。

それは、Quoraで働く、ということ。

彼いわく、「Facebookを効果的にするよりも、なにか新しいことを始めたほうが世界に大きなインパクトを与えられると感じた」とのことだ。

D’Angeloは、2009年の4月にCharlie Cheeverとともに動き出し始めた。そして、Rebekah Coxがウェブデザイナーとして6月に、Kevin Derがエンジニアチームの一員として9月に参加した。彼らはそこで、インターネットと現実との間にギャップが存在することに気付いた。数多くのQ&Aサイトがあるにもかかわらず、会社の創設者たちが思っていたほど質が良くないのだ。D’Angeloによれば、「ここ(Quora)のような質の良い知識共有サイトを誰も作っていなかった」という。

D’AngeloのFacebookにおける働きのおかげで、Quoraは2010年に公開されてから、メディアからは常に注目されていた。しかし、メディアで数多く紹介されたとしても、ウェブサイトのコンテンツが少ない、という問題を解決する策にはなり得なかった。

D’Angelo、Cheever、CoxのプロフィールはQuoraの超初期段階のQ&Aに組み込まれている。サイト内での交流を増加させるために、彼らはQ&Aのほとんどを自分たちで執筆した。最初に雇用されたメンバーと、β版の利用者はそれにならい、自分たちがいなくても問題にならないくらい交流が活発になるまで参加を続けた。彼らはいまでも時おり顔をのぞかせるが、もう参加しなくてもサイト内の交流が止まってしまうことはない状況ができあがっている。
彼らは自らがサイトの交流に積極的に参加したことにより、Quoraに参加していた人々の関心を集めることができた。それがなければ、空っぽのウェブサイトに集まった多くの人々は、みるみるうちに離れてしまっていただろう。

しかし、こう思う人もいるかもしれない。「Facebookの元CTOが作ったコンテンツだから、人が集まったのではないか」と。確かに、Quoraは立ち上げメンバーの経歴に少々特殊なところがあったので、メディアの関心は他サービスよりもはるかに高かったかもしれない。

そこで注目したいのが、redditだ。redditの立ち上げメンバーには、D’Angeloのような名声や、特化した知識はなかった。それでも、立ち上げから9年が経過したいまでは、全世界に1億人ものファンを持つコンテンツを提供するにまで至っている。

###redditの初期ユーザーたち
2005年6月にAlexis OhanianとSteve Huffmanによって創設されたredditは、9年間のうちに莫大な成長を遂げている(私自身、もうそんなに経つのか、とびっくりした)。Y Combinatorから生まれたスタートアップのうちのひとつで、資金は12,000ドルだった。そして現在では、1カ月に1億人もの人がサイトを訪問している。

2人の創設者たちは、マサチューセッツ州のメッドフォードにある小さなアパートから、このウェブサイトを発足させた。当時のredditはカテゴリ分けがされておらず、ひとつのページが存在しているだけ。subredditもなかった。そんななか彼らは、IT企業としては一風変わった方法を使って、初期段階の訪問者を集めた。500ドルというすべての広告費を投じて、ステッカーを作ったのだ。Ohanianは、旅する先々でこのステッカーをばらまきまくった。2人はイベントや会合などでも、このステッカーをあらゆる人にばらまいた。

「良い商品とコミュニティをオンラインでつくることが目的だった。ステッカーはその忠義を表すためのものだったんだ」とOhanianは語る。サイトは徐々に訪問者を集め始めるようになっていったが、ここでひとつ忘れてはいけないことがある。何度も繰り返すが、コンテンツのないウェブサイトには人は留まらない、ということだ。

redditのアプローチはそれだけではなかった。初期段階のコンテンツを自分たちで投稿するだけでなく、いわゆる偽アカウントを作って投稿をしたのだ。それらの投稿が、新しいユーザーをにつくり、さらに広い範囲のトピックをカバーするようになっていった。なにも知らない新規ユーザーからしてみれば、たくさんの参加者たちが積極的にコンテンツを投稿しているように見えただろう。Huffmanによると、彼ら自身がコンテンツを投稿しなくていいレベルにサイトが活性化するまで、数カ月もかからなかったという。つまり、相当な数の「偽ユーザー」がいたということだ……。

###実践してみよう。
コミュニティを作ろうとしているなら、この戦略はかなり効果的だと言える。誰だってコンテンツのないサイトに参加しようとは思わない。だから、増やす。偽アカウントを使うなり、自分のユーザーアカウントを作るなり、好きな方法を選択すればいい。もちろん、どちらにも利点はある。偽アカウントを使えば、1人や2人のユーザーのみが参加しているようには見えない。なんだかセコい気がする、という声もあるのは事実だが、それでもまったく内容のないコンテンツよりはましだろう。やりすぎには気をつけつつ、多少の批判は受け流す。それが奏功するケースもある。

また、この方法はまず特定のセクションに特化していったほうがいいということも付け加えておこう。D’Angelo、Cheever、Coxは、ITの知識が豊富にあったため、Quoraでのほとんどの質問に答えることができた。もしコンテンツを種付けするとしたら、あなたが参加するトピックで価値を生み出すことができるようなものを選ぶべきである。良い返答やコメントが返ってくると、そこに戻ってくるケースも多いからだ。

これは、人々が議論できる場を1カ所に制限することにもつながるので、雑多な雰囲気が生まれることの回避にもつながる。最初から間口を広げるよりも、1、2個のトピックを充実させるほうが、はるかに簡単だ。redditが発足したころ、カテゴリ分けもsubredditsもなかったため、情報が1カ所にまとまっていた。

新規訪問者が持つウェブサイトの第一印象は、最も重要である。サイトを見て、興味深いコンテンツが存在しないページには、人は留まらず、また戻ってもこない。自分たちがどんなコンテンツに対して特化することができ、ユーザーにとってプラスとなる情報を提供できるのか、今一度考えてみてはいかがだろうか。

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今回は、新規ユーザー定着のためのヒントを紹介させていただきました。正直なところ、新しいCGM系のWebサービスの場合、初期段階ではユーザーのエンゲージメントが低く、コンテンツが最初から充実したものにはなりにくい、という状況に陥りがちです。ですが、そこであきらめずに自らコンテンツを提供していかなければ、人々の関心やアクションにはつながっていきません。本稿は、まさにその“真実”を示してくれています。

私たちTokyo Otaku Modeは、世界に向けて日本のカルチャーを発信していく事業を行っています。Facebookページは最近では1600万人もの方から「いいね!」をいただき、多くの人々が交流を行っています。私たちは、そんな交流を更に活性化させ、世界中の方たちへ日本の文化を一緒に届けたいという熱意を持った仲間を募集しています。ご興味がありましたら、こちらからご応募ください。