LAオフィスを立ち上げました。やってわかった5つのポイント

Tokyo Otaku Mode USA Office Managerの中田です。
2014年8月よりLAにて拠点を立ち上げました。
本題に入る前に、僕の経歴を少しお話しておきますね。

【出身】
・埼玉県生まれ、埼玉県育ち
――小中高と県内の公立校に通い、大学も県内の大学へ
――両親は公立中学の教員と専業主婦の普通の家庭

【職歴】
・小学校日本語教師
――大学卒業後、USAのポートランドという地で日本語教師のインターンを1年
・海外向けEC立ち上げ
――某日本の制作会社の社内新規事業のメンバーに入り、6カ月で事業失敗
・小学校日本語、英語教師
――日本にて小学校の教員に戻り1年と1学期
・Tokyo Otaku Mode (2013年8月入社)
――今ここ

本当に普通の日本の教育を受けてきました。ごくごく普通の凡人であり、職歴だけを見ると、いかにも不安定な人材ですよね(苦笑)。しかし、こんな経歴の僕でも、無事にLAでオフィスを立ち上げることができました。

###断言します。誰にでもできます!(笑)

そんなに簡単ではないですが、本当に誰にでもできます。そう、大事なポイントだけ押さえておけば、まったく難しくないんです。そこで今回は、実体験に基づいた会社を立ち上げるために必要な情報を、5つに分けて紹介していきたいと思います。

##1.インターネットのサービスエリアは要確認

もはや、IT企業でなくてもインターネットは必須の時代になりましたね。オフィス開設となれば、賃貸契約の次にやるべき最優先事だと思います。もちろん僕のTODOリストのなかでもTOPにきており、申し込み手続きは渡米後の二番目に行ったことでした(一番目は車の購入→車に関しては次回お伝えする「生活編」で触れますね)。

そして、事件は起こりました。忘れもしません。渡米は8/5、インターネット申し込みは8/7と計画通り。
混んでいるとこのことで、工事日まで3週間待ちとの連絡をもらいました。「少し長いな」と思いつつ、3週間後に工事の兄ちゃんが2人やって来ました。3週間ものあいだ、家のインターネットで凌いでいた僕と相棒は、神が来たかのように歓喜!(ちなみに、家のインターネットは6時間で開通w)

兄ちゃん 「工事用の基板を見てくるよ」
……オフィスの外に行き、10分後。
兄ちゃん 「ごめんよ、このエリアはうちのキャリアのサービス外みたいだ」
僕と相棒 「マジ? オフィスの管理会社にも、サービス申し込んだときも確認済みなんだけど。ほら、メールもあるよ」
(心の声:適当に調べんなよ。頼むよ、今日からインターネットを使って作業する予定なんだからさ)
兄ちゃん 「……あるべきものがないんだけどさ、もう一度調べてくるよ」
僕と相棒 「うん、よろしく頼むね」
(心の声:ハイ、USAの適当なヤツ来たー!)
……3分後。
兄ちゃん 「ごめん。やっぱりないみたいだよ、いま電話して確かめたけど、サービスエリア外だって」
僕と相棒「・・・・・・・・・・・・・・・(しばしの沈黙)。わかった。君たちに非はないもんね。ありがとう」

とまぁ、こんなコントのようなやり取りを実際に体験し、けっきょくその日のうちに違うキャリアの店舗までわざわざ行き、5回も(!!)サービスエリアについて確認して、2日後にインターネットを導入したのです。「なんでこんなにはえぇんだよw」と思いつつ。このとき、僕は本件を“8.26事件”と名付け、のちにネタとしてブログで紹介することを決意しました。

##2.対面>電話>メール

この“8.26事件”でも物語ってるように、物事を確認する際は電話やメールよりも対面で行なったほうが圧倒的に早いです。これは日本でも当たり前のことかもしれませんが、USAでは僕の経験上、非常に顕著に感じられました。店舗のあるサービスや会社、社労士、弁護士との確認は相手が日本語でも対面が基本ですが、USAは広いので対面のアポばかり入れていたら、体がいくつあっても足りません。

そこで大活躍するのが、電話という革命的(?)技術です。日本の場合、メールでもサクッと取引が決まったり、東京においては、実際に会ったほうが早いというケースも多いですが、だだっ広いUSAでは、電話が最大の武器になります。この必殺技を繰り出し、効果を得るのは至ってシンプル。

【メール・電話・電話・電話】のコマンドを撃ち込めば、だいたいのコンボが決まります。
【メール・電話】のコマンドだとガン無視というカウンターアタックを喰らいます(念のためですが、全部の企業がそうってわけじゃないですよw)。

新規開拓や、未取引の企業ほどその傾向は顕著で、現地で見つけた相棒は、週に3回ほど電話して、それを3週間続け、やっと話ができるようになった企業もありました。

##3.USA時間>沖縄時間

日本には「沖縄時間」とか、ゆったりと時間が流れていくさまを表現するコトバがありますよね。皆さんもなんとなくイメージされているかもしれませんが、USAにも特有の“時間の流れ”が存在します。東京と比較するとわかりやすいのですが、なにより移動手段に対する常識が大きく異なります。NYの中心地を除き、USAでは車移動が基本です。

「LA名物」とUSA人も認める渋滞により、アポに遅れることは日常茶飯事。コテコテの日本人の僕は、最初はけっこう気になっていましたが、じきに気にならなくなりました。カッコよく言えば、異文化を許容できた瞬間ですね(笑)。もちろん、僕は絶対に遅れないように行きますけど。

そしてこのUSA的な“時間の流れ”の流れは、サービスに大きく影響しているんです。僕が最も衝撃を受けたのは、配送というサービスにおけるクオリティ。USAにはAmazon Primeという年間のサービス料を払えば早く配達してくれるものがあります。年間$99(2015年4月現在)支払えば、2日間保証で荷物が届くというサービスです。日本だともう少し安く、なおかつ翌日や、早ければ当日届いたりしますよね。とはいえ、配送は物理的に土地の広さが大きく関係しているので、2日というのはむしろ素晴らしいことであり、時間が命のスタートアップカンパニーとしては、実にありがたく、即入会しました。

もうここで、オチはだいたい想像できたことでしょう。そう、Amazon様でさえも2日間で来ないことが多々あるのです。この遅れにはちょっとした法則があり(独自調べ)、小さい荷物だと遅れやすくなることがわかりました。Amazonが契約しているのは、UPSというプライベートキャリア(日本でいうヤマトのような存在)で、ここの配送網では2日間が”保証”されるのですが、小さいものだとUSPS(日本での郵便局)で送られることもあり、これが遅れを生じさせている原因だと突き止めることができたのです。時間の概念は3カ月くらいそこで生活しないと慣れてきませんし、最初はわからないことだらけ。ですので、日本の社会にどっぷりと浸かっている方は、少し覚悟して行ったほうがいいかもしれません。

##4.祝日、有給休暇は0でもOK

ここからは、会社を立ち上げるにあたり、けっこう重要なお話をしていきましょう。日本の場合は、就業規則というものの発生義務が、常時働いている人が10人以上で生じます。カルフォルニア州の場合、義務はありませんが(州によって異なるので、今回は実際に行ったカルフォルニア州のお話)会社のリスクヘッジとして作成、利用するという意味合いが大きいです。

どういった内容やルールで働くかを示したのが、Employee Handbook (就業規則)というもので、雇用者と被雇用者の間で「契約」ではなく、あくまでも「同意」という形でサインが交わされ、法的拘束力がないというのが日本と大きく異なる点。訴訟が多い国なので、いざというときの武器として会社が持てるような形をとっています。

よって、祝日の設定は自由です。日本の祝日は15日間しっかりと国から定められていますが、宗教的な違いも考慮されているようで、USAではすべて「推奨」的な位置付けにあり、それもEmployee Handbookにて会社が定める必要があります。全米の会社が設定している祝日の統計データが存在するので参考にはしますが、極論から言うとなしでOKみたいです(そんな会社はない、と社労士に言われましたが……)。

有給休暇についても制限はなく好きに設定でき、会社の方針として「身を粉にして働きなさい」というのであれば、0というのも可能(絶対に人は来ませんけどね、と社労士に言われましたが……)。基本的に、雇用、被雇用の関係が発生する職場では、作成必須のものとしてとらえておくのがいいかと思います。作成には法務の動きにもよりますが、最低でも1カ月はかかります。弊社の法務は最速だと自負しているものの、戻し等のやり取りを繰り返すことにより、完成まで1カ月を要しました。

##5.超有名企業社員も時給!?

4.でお話したように、お国が異なれば、制度も異なり苦労するのは間違いなし。ここでは被雇用者のステータスについて少し紹介します。日本では、会社と社員とで「契約」が交わされ、「○年更新です」とか「解雇の場合○カ月前に通知します」とか、いろいろ内容が設定されているのが一般的でしょう。その契約をもとに、就業規則がルールとしてあり、被雇用者はそれを順守しなければなりません。

カルフォルニア州の場合は、この日本のような「契約」を結ぶ会社は非常に少ないです。結ぶとしたら上級役員とか、公務員とかそういう職がほとんど。被雇用者のステータスに、正社員、契約社員、パート、アルバイトという住み分けはありません。Employeeのみです。そのなかでまず、職種によってExempt、Non-Exemptに振り分けられます。この2つを少し解説すると……。

Exempt……マネージャーや特殊技能職が多く、時間に左右されない職務内容の人。裁量労働制に近い。
Non-Exempt……一般的な職種で、時間により給与が発生することが多い。

この2つの大きいな違いは、ズバリ「残業代」にあります。前者においては、最低年俸が高めに定められていますが、そのかわり残業代は発生しません。一方の後者は、最低時給が物価によって定められており、残業代が発生します。残業代についてはカルフォルニア州は非常に厳しく、California Overtime Low というものによって細かく制定されています。

なかでもいちばん驚いたのは、一日のうちで8時間を超える労働が発生した場合、超過分の賃金は1.5倍に、12時間を超えた場合は2倍になるという点です。日本で「アメリカ人は残業しない」と言われるのにも納得がいくでしょう。予算管理の面で会社が原則的に残業はさせませんし、被雇用者としても「給与泥棒」と思われたくないため、終業時刻になればみんなさっさと帰ります。

一瞬、会社としてのデメリットが大きいと思ってしまうかもしれませんが、管理や評価を明確にしやすく、とても合理的なシステムであると僕は感じています。なぜなら、実際に非常にうまく機能しているからです。ある意味、誰もが一分一秒を真面目に過ごしているため、無駄がなく、集中力が高まります。ひいては、生産性も向上するわけです。

また、ほとんどの場合はAt willという形態で雇用が発生しているのも、USAならではと言えるでしょう。これは、「お互いに、嫌になったらいつでもさようならできますよ~」という取り決めです。「被雇用者は、退職する○カ月前に事前通達しなければならい」といったことを定めるのが、Employee Handbookですが、これはあくまでも補助的な役割に過ぎず、法的拘束力はありません。よく、映画で朝の出社時に段ボールを渡されて、「はい、さようなら」と言われ、呆然とした主人公が荷物をまとめ……という描写を見かけますが、まさにこの制度があるからこそ生まれる光景なんです。

以上5点、僕の経験によって得られた重要ポイントを記事化させていただきました。いかがだったでしょうか?

海外でチャレンジすることは「違い」が邪魔をするように感じますが、その違いを知ることはとても楽しく、また、新しいものとの出会いは自分を成長させてもくれます。冒頭でも述べたように、僕の超凡人的かつ、めちゃくちゃな職歴でもLAで無事にオフィスを立ち上げることができました。異文化な体験をたくさんしましたが、今回最も勉強になったことは、「なんでも本気になればできる」ということです。

「こんな人でも立ち上げを任せてもらえるのか! Tokyo Otaku Modeって面白い!」と少しでも思った方、ぜひ一緒に働きましょう。情熱、やる気、本気、120%、力を出し足りないと思っている皆さんをお待ちしております。
職種に関係なく、ミッションに向けて強い芯を持って日々一緒に働ける仲間を募集しておりますので、気になった方はこちらまでご一報ください。

次回は、「LAで新生活を送るに際し押さえておきたい最低限4つのポイント」を、これまた実体験に基づいてご紹介する予定です。お楽しみに!