サンフランシスコのど真ん中から始まった、100億の価値がある驚きのグロースハック術とは?

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今回で最後となる、シリコンバレー発のグロースハック術講座。最後は、最近急成長を遂げているAirbnbをケーススタディとした記事です。サンフランシスコ発の、宿泊施設貸し出しサービスのサイトで、ホテルなどのプロではなく、一般人が空き部屋を掲載し、提供できるSNS型のサービスです。日本でも利用者が増えており、注目度も上がっているサイトから、驚きのビジネスヒントをもらいましょう。

※この記事は、Quora(米国のQ&Aサイト)に投稿されたものを、私たちTokyo Otaku Modeが日本語に翻訳したものです。執筆者はMarkus KirjonenさんというUIデザイナーの方で、スタートアップについて多く書かれています。私たちはMarkusさんから許可をいただき、この投稿を日本語に翻訳して日本で発信する機会を得ることができました。合計6回にわたり、有名スタートアップ企業がどんな方法で新規ユーザーを手に入れたのかについて、実例をもとに紹介していきます。

第一回:Dropbox編 / 第二回:Quora/reddit編 / 第三回:Foursquare編 / 第四回:Groupon編 / 第五回:Tinder編

宿泊施設の貸し出しをサービスとするAirbnbは今、100億ドルの価値があるといわれている。2008年に設立した会社としては、相当良い結果を残しているといえるだろう。サービスもとても良い。

だが、私がAirbnbで注目したいのはそこではない。なにより注目すべきは、彼らのユーザー獲得方法、グロースハックが特別に興味深いものだからだ。本当にCraigslistを使ってあれだけのユーザーベースを作ったのだろうか。詳しく見て行こう。

#Airbnbの沿革
Airbnbは、Joe Gebbia、Nathan Blecharczyk、Brian Cheskyを中心に2008年にサービスを開始した。最初は、人々が想像するような魅力的なウェブサイトでは全くなかった。サンフランシスコの家賃がどんどん上がっていた頃、チームはそれに伴ってちょっと金稼ぎができないかな、と考えていた。そこで1つ挙がった案が、アパートにあった簡易ベッドを使ってはどうか、という物だった。大きなデザイナー向けの会議がサンフランシスコで開催される予定で、市内のホテルに空室は少なかった。

ウェブデザイナー、ディベロッパーとして、宿泊場所を貸し出すためのウェブサイトを自分たちで立ち上げるのは、Craigslistを使うよりもはるかに将来性を感じたという。数週間の開発の後、後にAirbnbとなるサイトのベータ版で「アパートの空き部屋貸します」と銘打ち、細かく写真や情報を載せてアプローチした。結果、3人の人が滞在し、1000ドル近い利益を得る事ができた。

この実験で、彼らはお金ではないとても有益な物を得る事が出来た。その週末のすぐ後から、世界中からメールが届くようになったのだ。もちろん内容は
「いつAirbnbはロンドンでサービスを開始するのですか?」
「日本でAirbnbが使えるようになるのはいつですか?」
というものだった。

このようなフィードバックが多いと、このビジネスは価値があるという指標にもなる。このチームで更にサービスを拡大しよう、という結論に至り、自分たちの資金に加えて少々親たちにお金を借りて、人々が興味を示したサービスを本格的に開始することとなった。間もなくしてY-Combinatorに承認され、彼らの目的はユーザー数を増やすことへとシフトしていった。

#Craigslistにスパムを送る事で、ユーザーを獲得!?
Airbnbのようなビジネスを始めるときに最も気を付けなければならないこと。それは、ユーザーが提供するサービスの質が良い物である、ということだ。RedditやQuoraとは違って、偽のアカウントを使ってサイトを活性化させることはできない。実際に人々に登録してもらい、本物の家やスペースを貸し出してもらわなければならないのだ。ラッキーなことに、この分野にはAirbnbに先駆けて手を出していたサービス、Craigslist Vacation Homesがあった。

Airbnbのチームは、Craigslistに自分たちの家を載せている人たちにコンタクトを取り、Airbnbでも投稿をしてみませんか、という提案を送るメールを送っていた。だが、実はそのメールではなく、ある一般人のGmailアカウントがAirbnbの全てを変えたのだ。そのメールがこれだ。

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Re: $700, 1ベッドルーム/レイク・タホにあるコンドミニアム/4名用(タホシティ、CA)

こんにちは。

タホシティ周辺で、Craigslist上で最も良いリストをご覧になったあなたにだけ、特別な情報をお送りします。世界最大級のオンライン宿泊施設貸し出しサービス、Airbnbをあなたにお勧めします。このウェブサイトは、1ヶ月に300万回も人が訪れ、見ています!
http://www.airbnb.com
必見です。

Jill Dより

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素晴らしいじゃないか。もちろんAirbnbはこのメール騒動に一切の関与がない、との発表をしているが、こういったメールが送られたのは史上初というわけではない。PayPalはeBayを使い、オークションやメッセージを通してPayPalを広める、似たような戦略を行った。どうやら効果的らしい。Dave Goodenがこのような戦略方法について考察を行っているので、興味がある人は見ると良い。

Airbnbの成長を人々が認知するようになってから、彼は人々が何をしているのかを注意深く観察した。偽メールをCraigslistで送り、数時間後に「Airbnbのファン」からメールを受けてから、彼は更なる手を打った。完全な偽宿泊貸し出しサイトを作り、スパムソフトウェアを作ったのだ。彼はメールアドレスをどんどん集め、先ほどのようなメールをまた送った。結果は良好。1000人を超える宿泊施設のオーナーたちが、自分たちの施設をAirbnbに載せることとなったのだ。

彼はこれを振り返り、こう語る。
「こういったオペレーションを行うと、万単位でかなり絞られたターゲットたちにコンタクトを取る事ができる。だから6万人ものユーザーを集める事ができたのだろう。市場を成長させるという点において、最も難しく、最も大切なことだ。」

#質の良いサービスを作り、写真は1回に1枚ずつ。
Airbnbがユーザーを獲得のために、Craigslistの人々にメッセージを行う、という方法は非常に面白いやり方だが、それだけが理由で成功したわけではない。彼らの成長の背景にある2つ目のポイントは、「見た目」の良さだ。

2009年、Airbnbは週にたった200ドルしか利益を出せていなかった。今はもちろんそうではない。その頃のAirbnbは大きな問題を抱えていて、その問題を彼らが解決することが出来たからだ。

会社を救ったのは、Y Combinator。そこでPaul Grahamと出会うこととなり、40ほどあったニューヨークのリストを見た。時間をかけてそれらを分析した結果、1つの共通点を見いだす事が出来た。それは、写真の質がひどい、ということ。携帯電話のカメラで素人が撮った写真を使い、焦点が合ってすらいないものもあった。

解決策は明確。写真がひどいものを直せば良いのだ。彼らはカメラを手にしてニューヨークへ飛んで行き、細かく鮮明な写真を取り直していった。1週間もしないうちに彼らの努力は報われ、写真を直しただけで200ドルから400ドルへと売り上げが向上した。これは、バーチャルの世界でどれだけ写真が大切かを物語っていると思う。プログラマーたちは、ついコーディングの問題に目を向けがちだが、それ以外のサービスの質ー例えば、写真の質ーなどにも目を向けることが必要だ。

今では、Airbnbのウェブサイトには、素晴らしい写真が掲載され、サイトのデザインにも凝っている。

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彼らのユーザー獲得方法には賛否両論あると思いますが、話題性を集めるにはやはり効果的だと言わざるをえないでしょう。今注目を得ているPayPalの話も少し出てきましたが、既存のフィールドにターゲットが集中している場合、それを使わない手はありません。スパムメールに関与しないとしても、何かしらの方法で自分のサービスへと人を流す事ができれば、更なるユーザー獲得へと繋がるでしょう。

今回で、Markusさんが紹介する、グロースハック講座は最後となります。どのスタートアップも、それぞれ自分のサービスに最も適した形でユーザー獲得へと繋がる工夫をこらしていました。

私たちTokyo Otaku Modeも、日本のコンテンツを世界へと発信するサービスを行うスタートアップの1つ。「コンテンツの未来に何ができるか」というミッションのもと、日々成長を続けています。世界を相手にしたマーケティングによるユーザー獲得や、より質の高いサービスを提供したい、ウェブデザインや開発に携わっていきたいという熱い思いを持った人を募集しています。ご興味がありましたら、こちらからご応募ください。